〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第79章 鴇色の君に酔わされて❀豊臣秀吉❀
「悪いな、美依。すぐに終わる」
「政宗に聞いたよ、飲み比べの理由」
「ん、そうなのか?」
「あまり無理して飲んじゃダメだよ?」
「お前との時間を光秀に譲るわけにはいかないからな…大丈夫、俺は負けないから」
そう言って、盃から口の中に酒を流し込み、その手の甲で唇をグイッと拭う。
その普段は見ない男らしい一面に…
思わずどきっとなって、少し照れてしまった。
(なんか、カッコイイな……)
骨ばった大きな手に盃が収まり、それを煽るだけで、すごく様になっている。
それに少し酔ってるせいか、目元が赤くて、何となく気怠そうな色っぽい雰囲気を醸し出しているし…
『大人の男の色気』のようなものを、まざまざと見せられている気がして、変に落ち着かない。
「美依、待っていろ。もう決着はつく」
すると、目の前にいる光秀さんが、愉快げに私に話しかけてきた。
見れば、光秀さんはいつもと変わらない。
相変わらずの底知れぬ笑みを浮かべていて、顔も赤くないし、お酒になんてちっとも酔っていないようだ。
「光秀さん、全然平気そうですね」
「俺は酒に酔わない質でな。美依…たっぷりいじめた後で、愛してやろう」
「お、お断りします!」
「おや、残念」
「当たり前でしょう!」
(本当に、光秀さんはっ……!)
どこまで本気なのか、さっぱり解らない。
いつも腹の底が見えないし…
にこにこ意地悪い笑みだって、今も健在だし。
光秀さんの行動には必ず裏がある。
そんな事は秀吉さんも解っているはずなのに…
煽られて飲み比べしちゃうなんて。
私との時間を譲る訳にはいかない…なんて。
────どうして、私の事そんなに
「秀吉の勝ちを信じているのか、美依」
「勝てないと思っているから、寄り添ってるんです!」
「なるほどな。だが…秀吉はもう限界のようだな」
「へ?」
そう言った次の瞬間。
肩にコトンと重みが掛かり、私は瞬時に首を横に向けた。
見れば、さっきまで普通にしていた秀吉さんの頭が私の肩にもたれかかっていて…
真っ赤な顔がふわふわと微睡んで、眠そうに瞬きを繰り返していた。