第3章 ◇非平凡な現実に遭遇した日◇
「……なに……なん、で…」
鋭い棒状の何かに体を、何箇所も貫かれている長門さん。その長門さんへ、通常ではありえない攻撃を幾度も繰り返す…クラスメイトの、朝倉さん…!?
どう考えても非日常的で、暴力的で衝撃的な場面に、思考がうまく働かない。
彼女たちの交わす会話の中、何故私がいるのかという言葉が聞こえたような気もしたが。このときの私には、まともに考えることなんてできなかった。
気がつけば、おかしな空間から教室は元に戻っていて。起き上がれない様子の長門さんの体にさえ、何も異常は見当たらなかった。
「ススキ、大丈夫か?」
「…うん。キョンちゃんは、大丈夫?何もない?」
「ああ、何とかな。長門も助けてくれたし」
長門さんの調子が戻るまで、私たちは教室で時間を過ごしていた。
さっきの状況について、朝倉さんについて、涼宮さんのことについて、キョンちゃんのことについて、私のことについて…いつもの無表情で淡々と説明する長門さんの声を聞きながら。
私は自分が異世界人なのだ、と。改めて思った。
長門さんが帰ってから、私はキョンちゃんと2人。並んで通学路を歩いていた。
今日あった出来事をかみしめるかのように、ゆっくり、ゆっくりと。歩いて。
「…キョンちゃん」
「…ん。なんだ?」
「……キョンちゃん」
「ん?」
「キョンちゃん!」
「おわっ!?」
自分よりもかなり背の高いキョンちゃんに、抱きついた。
細くも太くもないキョンちゃんの胴体に、腕を回してぎゅううっと。
確かめる、彼の、存在を。感じる、生きている、熱を。私と彼が、こうして触れ合えることを、強く実感する。