第3章 ◇非平凡な現実に遭遇した日◇
「…気のせい、だよ」
ただの気のせい。
そう心に言い聞かせる頭とは裏腹に、体は動いていた。キョンちゃんがどこへいるのかも知らないくせに。
足は前へ前へと駆け足で進み、息切れしながら辿り着いたのは。教室の前。
「……な、に……これ…」
変だ。
どこが、なにが、なんて言えない。わからないけど、あえていうなら、空気が。気持ち悪い。怖い。ここにいたくない。すぐにでもこの場から離れたい。
でももし、教室の中にキョンちゃんがいたとしたら?
私は涼宮ハルヒの世界のことも物語も知らない。
この世界が、もし、私のいたところとは違う危険な要素をもっていたとしたら?キョンちゃんが、この胸騒ぎの原因に、関わっていたとしたら?
「く、そぉー………キョンちゃんのばーかーっ!!」
怖いんだぞ、ちくしょー!!!!
勢いをつける為に叫びながら、思いきって扉を開けて中へ突き進む。ずぞぞ…という、奇妙な感触が全身を包んですり抜けた。何ともいえない気持ちの悪さに鳥肌が立つ。
「っ…ススキ!?」
「キョンちゃん!!」
やっぱり、いた。
周囲の確認もせずに、ただ視界に映ったキョンちゃんへと駆け寄る。
呆気にとられたような顔をして驚いていたキョンちゃんは、すぐに表情を引き締めると、私の腕をつかんで背後へ隠すように押しやり。
そこでやっと周りを見渡す余裕のできた私は、キョンちゃんの体の向こう側にある光景に、目を見開いた。