第3章 ◇非平凡な現実に遭遇した日◇
「……どうしたんだ…?」
「キョンちゃん…」
「なんだ?」
「…こわかった」
「…ああ」
「すごく、こわかった」
「もう大丈夫だ」
「キョンちゃん、が…無事で……よかった」
「っ………ああ。よかった…」
「………」
「…ススキ」
「…なに」
「悪かったな」
返事をする代わりに、黙ったまま頭を左右に動かす。
ぴったりと体をくっつけたままだったおかげで、ちょうど彼の胸の辺りに頭をぐりぐりとこすりつけるような形になってしまったけれど。キョンちゃんは気にせず、そっと抱きしめ返してくれた。
背中と腰に当てられた、大好きな温かい掌にも。今日はドキドキすることはなく。
陽がすっかり沈んで、星が煌めきはじめるまで。ただただ安心感に包まれていた。
(その後、キョンちゃんは家の前まで私を送ってくれたんだけど)
(ずっと手を繋いでいてくれたのは、そのまま放っておけなかったから?それとも、特別な意味が…少しくらいは、あるの?……あると、いいな)