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【ハッピー・ファミリー】ハピファミ!

第5章 ハピファミ!5


愛するまゆらちゃんは、最近「ごっこ遊び」に夢中なようだ。

ごっこ遊びとは、その名のとおり何かになりきる遊びで「ままごと」もこれに含まれる。
中でも、まゆらちゃんがお気に入りなのは「洋服屋さんごっこ」なのだが、幼稚園で人気があるのは「ままごと」の方で、髪を短くしてから外見がカッコイイ感じになってしまったワタシは、付き合いの悪い男の子に代わってお父さん役にお兄さん役……と、常に取り合いの対象になっている。

まゆらちゃんがよくやるのは、お母さんやお姉さんの役。
ワタシがまゆらちゃんのいるグループばかりで遊ぶのでズルイと言う子もいるけれど、これは仕方がない。

はっきりいってワタシは「ままごと」遊びに興味はないのだから。
まゆらちゃんが楽しそうにしているのが楽しいから、一緒に遊ぶのだ。
とはいえ、まゆらちゃんに八つ当たりされてはかなわない。

そこで思いついた馬鹿馬鹿しい解決法……お父さんでもお兄さんでもなく、ワタシは「犬」になることにした。

名前を呼ばれたらワンと鳴き、お手と言われて右手をのせ、散歩に連れて行ってもらう。
あとはエサの時間まで寝ているそぶりで過ごすこの役は、無理に笑う必要もなく、それはそれは楽な役どころであった。
まゆらちゃんには「イイコねー」といって頭をなでて可愛がってもらえるし、ワタシほど楽しんでこの役をする子供もいないだろう。

犬になって「ままごと」をじっくり観察するようになると、色々な発見があってなかなか面白かった。
たとえば喋り方、たとえば仕草、たとえば行動。
一人一人、それぞれのパパママがあり、それはそのまま自分の家族の様子が表現されているようだ。
まったく、子供は親の背中を見て育つとはよくいったものである。

子供の前でうっかりケンカをしようものなら、翌日の「ままごと」で態度から言い回しまで細部にわたって見事に再現される。
そして他の子供たちからその親へと伝わり、家庭内事情は筒抜け状態。
近頃は主夫のいる家庭も増えているらしい……という、ワタシにとって重要性の薄い情報がムダに脳へ蓄積されてしまった。

子供は見ていないようで、よく見ている。
けっこう鋭い生き物なので、ワタシも異物として扱われないように少しは気をつけた方がいいかもしれない。
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