第5章 ハピファミ!5
幼稚園で毎日のように繰り広げられる「おままごと」に飽きたワタシは、一人抜け出して絵本コーナーに行くことにした。
同じように絵本をよく読んでいる子たちは、基本的に大人しい気質なのか、その場が騒がしくなることもなかった。
やはり、好みの違いは性格や気質の差も大きいらしい。
どこが自分と合っているのか試すべく、ワタシは愛するまゆらちゃんのそばを自由時間のときだけ泣く泣く離れ、日によって過ごす場所を色々と変えてみた。
そしてその内、絵本を読んで過ごすことに落ち着いた。
ピアノやオルガンの前に集まる音楽好きな子のところでは、強制的に歌わせられる上に宿題まで出されるので却下。
砂場でなにやら作っている子のところでは、砂が目に入ったし泥だんごを食べさせられそうになったので二度と行くまいと誓った。
遊具で遊んでいる子のところでは、順番待ちの末にケンカが勃発するのでやめた。
男の子に混じってみたらオトコ女とからかわれ、愛するまゆらちゃんのことまで悪く言ってきたものだから頭にきてしまい、女の人ウケするこの容姿を利用して「せんせい」とやらに泣きついてみた。
強く叱るということは保護者の手前できないようだったけれど、その男の子はしばらく女の子全員から冷たくされていた。
ざまあみろ!とスッキリしたところで、この場所も無理。
―――とまぁ、他にも色々あった上での結果だ。
そうはいっても、ワタシがまゆらちゃんからずっと離れていられる筈もなく。
同じ室内で「ままごと」をしているまゆらちゃんのすぐ隣で絵本を読んでいるうちに、自然と本を読んでいてもいい役で、いつの間にか「ままごと」に引きずり込まれていった。
ちなみに、二日前。
「わたるちゃんは、おかあさんのしりあいの、びんぼうがくせいさん、だって」
「……まゆらちゃんは?」
「まゆらはね、びんぼうがくせいさんの、すんでるおうちの、おおやさんのむすめ!」
「へぇ」
「ほんにむちゅうになってて、たおれてるのをはっけんして、おかあさんにおしえるの」
「こまかいんだね」