第4章 ハピファミ!4
幼少期4■ドレスとタキシードな違いを□
【個性を確立させよう計画】、第一段階は無事終了した。
「まゆらちゃん」はカワイイ服で、「わたるちゃん」はカッコイイ服。
この認識が周り中へ浸透した昨今、そろそろ第二段階へ進むことにしようではないか。
さて、今現在まゆらちゃんとワタシの違いといえば洋服だけ。
それも脱いでしまえば、これまたそっくりシスターズへ逆戻りである。
それでは意味がない。
―――というワケで。今度は、服がなくとも違いを見せよう!
母親のいきつけ美容室にくっついて行き、まゆらちゃんは毛先を整えトリートメントを。
ワタシは母親がシャンプーで見ていない隙に、肩まであった髪をバッサリ切ってもらった。
子供特有の細くやわらかい髪質のおかげで、フワフワ良い感じに仕上がったベリーショート。
それを見た瞬間、母親は今まで聞いたことのない声でワタシの名前を叫んだ。
焦りに強張った顔つきの店員さんを、恐ろしい気迫で詰め寄ろうとした母親を押し止めたのは、もちろんワタシ。
……ではなく、まゆらちゃん。
「わぁ!かっこいいね、わたるちゃん」
「ふふっ、似合う?まゆらちゃん」
「うんっ。すごくにあってるよー、ね?おかあさん」
満面の笑みを浮かべたまゆらちゃんに同意を求められた母親は、すっかり毒気を抜かれ。
すっかり気の緩んだ表情で、楽しそうにはしゃいでいるワタシたちを見ながら苦笑した。
お会計のときに謝罪してきた店員さんにも、「いいえ、お騒がせしてごめんなさいね。素敵に仕上げてくださってありがとう」―――なんて、大人な対応で笑顔を見せた母親に、心の中でごめんなさいとありがとうを呟く。
母親がいい人で、本当に助かった。
それでもやはり、狙ってやった側としては多少なりとも罪悪感が残るもので。
ワタシは店員さんに「ありがとう」の言葉を送りつつ、まゆらちゃん直伝のエンジェルスマイルをめいっぱいサービスしておいた。
大抵の人はこれで誤魔化されてくれるし、癒しだと言ってくれる。
まぁワタシの場合、天然ものでなく養殖というかコピーになるけれど。
ああ、子供の注文を笑顔でうけてくれた勇気ある店員さんに感謝、そしてどうか祝福を。