第18章 ハピファミ!18
「カッコイイって、言ってるんだよ。その髪型、わたるちゃんにすごく似合ってる」
「…ほんとに?」
「もちろん、本当だよ」
「もう一回、言ってください」
「すごく似合ってる」
「……違う、そっちじゃなくて」
「……カッコイイよ」
こんな一言で機嫌がよくなるなんて、なんて単純なんだろう。
ちょろすぎる自分に苦笑を浮かべる。
「…ありがとうございます、まゆらちゃん」
でも、少しだけ悔しいから。
椅子から立ち上がると、まゆらちゃんに顔を寄せて唇の端ギリギリのところにキスを落とす。
しっかりわかるように、ちゅっというリップ音も立てて。
「褒めてくれたお礼です」
「っ……わたるちゃん!」
口の端を手で押さえて、頬と耳を真っ赤に染めて動揺するまゆらちゃんが可愛くて。
思わず声をあげて笑ってしまう。
笑えた。その事実に自分で驚いた。
もう、こんなに普通に声を出して思いきり笑えている。
「まゆらちゃん…今日は一緒にいてくれて、ありがとうございます」
「いいよ、そんなの当り前でしょう。私も、わたるちゃんと久しぶりにゆっくり過ごせて楽しかったし」
ナチュラルに笑顔で嬉しいことを言われて、照れるのを隠すようにまゆらちゃんの頭を撫でてみた。
「明日、なんですけど…まゆらちゃんのバイトが終わった後、ワタシの方のお店に来ませんか?」
「わたるちゃんのバイト先に?」
「はい。もし嫌であれば、無理にとはいいませんけど…疲れてるだろうし」
まゆらちゃんが不自然に感じないように、さり気なさを装って髪切りに使った道具を片付けながら話を続ける。
その実、断られたらどうしようと心臓をドキドキさせながら、声が揺れるのはぐっとこらえていたけれどゴミをまとめる手は微かに震えていた。
「キワコさんにもお世話になりましたし、よかったら二人で飲みにきてください」
「キワコと?…そうだね、いいかもしれない。それに、前からお店には行ってみたかったし」
「そうだったんですか?言ってくれたら、いつでもエスコートしたのに」
少し驚いて、緊張を悟られないよう逸らしていた目線をまゆらちゃんの顔に戻す。