第18章 ハピファミ!18
ワタシが誰かにこんなことをされたら、邪魔だとボディに肘を入れているかもしれない。例外、まゆらちゃん。
とくに、うづさんだったりしたらエルボーの後に頭突きを入れて……想像して笑みが零れそうになったところで、ハッとする。
今はやめよう。
息を小さく吐いて気を取り直すと、まゆらちゃんの肩を軽く叩いてこちらへ意識を向かせる。
「手伝います」
「ほんと?ありがとう。じゃあ、ここにある野菜を全部切ってくれる?」
「なにを作るんですか?」
「ハム入り炒飯と、野菜と卵の中華風スープ」
「美味しそうですね。早く食べたいから、小さく切ってもいいですか?」
「ふふっ、いいよ。朝食べてないから、お腹空いたもんね」
「明日は、ちゃんと食べますよ」
ぐぎゅう…と小さく鳴り出したお腹をさすり、恥ずかしさを誤魔化すようにまゆらちゃんの頬に唇を触れさせる。
わたるちゃん!と驚いた声をあげて赤くなるまゆらちゃんを見たら、ほんの少し気持ちが温かくなった。
かわいい、かわいい、いとおしい。
フッと自然と漏れた笑みに気づき、こんな時でも愛しさというものは変わらないんだなと思いながら、真剣に野菜を切りはじめた。
*****
ここまで長い時間を、二人でのんびり過ごすのは久しぶりだった。たった二人きりの家族だというのに。
子供の頃とは違い、最近はそれぞれ個人の時間が長かったのだなと気づいた。
ゆったりとした穏やかな時間が流れる。
側にいるだけで、こんなにも安心できる相手はそういないだろう。
「わたるちゃん、髪伸びたね」
「そうですね…そろそろ、また短くしたくなってきました。長いとやっぱり邪魔だし、うっとおしいです」
「あはは、わたるちゃんらしいね。食べ終わったら切ってあげようか?」
「いいんですか?じゃあ、お願いします」
まゆらちゃんのおかげで、お昼ご飯をすませる頃にはすっかり心も落ち着いていて。
いつも通りしっかり目を見て笑い合うことも、躊躇なくスキンシップをとることも出来るようになっていた。
いや、躊躇なくというか遠慮なく…かな。