第18章 ハピファミ!18
【青年期7】■□太陽を追いかける月を追いかけて守る太陽を守る月の行方□■
バイトを休むことにした。
あの夢を見てから、頭が混乱しっぱなしで。
とてもじゃないが、『私』の記憶にある『彼ら』とよく似た『ミンナ』と顔を合わせて冷静でいられる自信がない。
喋ることすら怖くて。申し訳ないと思いつつ、まゆらちゃんにバイトを休むことをキワコさん経由でエナさんに伝えてもらう。
仮病だ。
連絡すら自分で出来ないなんて、大人として情けないと言われようとも出来ないものは出来ない。今はまだ。
もう少しだけ、時間が欲しい。
「わたるちゃん、もうお昼だよ。ご飯どうする?たまには美味しいもの食べに行こうか?」
無理を言って、同じくバイトを休ませてしまっているまゆらちゃん。
その横にぴったりくっついて映画を見ていたら、あっというまに時計の針は12時を過ぎていた。
朝から水以外なにも入れていなかったお腹が、まゆらちゃんの言葉を合図に動きはじめたような気がする。
でも、外には出たくない。
ゆっくり頭を横に振ることで返事をして、まゆらちゃんの肩に額をすり…と擦り付ける。
「まゆらちゃんが作ったもの、食べたいです」
「そっか。冷蔵庫、なにがあったかなぁ?…わたるちゃんは何が食べたい?」
「なんでもいいです。まゆらちゃんの手作りなら、全部食べる…」
たとえ稀に見る失敗作だろうが毒入りだろうが、まゆらちゃんが作ってくれた物なら完食してみせる。
まぁ、まゆらちゃんが料理を失敗するなんてことはないけれど。
買い物してまで豪華な料理なんていらない。
だから今は…今だけは、ただこのまま傍にいさせて欲しい。
双子とはいえ、ワタシの方が姉であるのに…まるで手のかかる幼い妹のような我が儘。
それでも、まゆらちゃんは仕方がないなぁと優しく笑って許してくれる。
まゆらちゃんの愛はきっと、海のように広く深く、空のように果てしないのだろう……相手にもよるが。
そんなことをぼんやり考えながら、キッチンでお昼ご飯の準備をしてくれるまゆらちゃんの動きを、背後霊のようにくっついて眺める。
「わたるちゃん、あの…包丁使うから、ちょっと離れて?」
危ないから、ね?そう言ってそっと自分の肩からワタシの顎を外そうとするまゆらちゃん。優しい。