第17章 ハピファミ!17
【青年期6】□■割れた卵は完成したパズルの上でジョーカーに孵化する■□
うづさんをうっかり愛しいと思い、体を繋げてしまった翌日。
ワタシたちの関係は傍から見てもすぐにわかるほど、明らかに激しく変化することは……なかった。
相変わらずうづさんは遅刻するしサボるし態度は悪く、岡内くんからもエナさんからも遠慮のない文句の嵐。
もちろんワタシが給料泥棒を見逃してやる義理はないので、普段と同じく武力行使しながら最低限の仕事はきっちりさせておいた。
ただ、知りたくもなかっただろう友人二人の事後を目の当たりにしてしまった岡内くんだけは、時々そわそわ意味ありげな視線をこちらに投げかけてきたり、うづさんへの言葉が毒を増していた気がするけれど。
エナさんに勘ぐられるほどではない辺り、本当にすくすく良い男に育っていると思う。
「あー、つっかれたぁー!おい、わたる。なーにニヤニヤしてんだよ?」
「うづさん、お疲れ様です。いや、岡内くんカッコよく成長したなぁと思いまして」
「なんだよ、アイツに惚れてんのか」
「違いますけど、一般的に見てなかなかの優良物件なのは確かですよね」
「俺は?」
「作りだけは一級品なワケあり物件」
どれだけ高級で立地や条件が良くても、住む気にはなれない。
同じく、いくら顔と体が良くても付き合う気にはならない。
プラスアルファの何かしらが加わらない限りは、今すぐにこの関係が変わるということはないだろう。
感じたものが、疼くものが心に居座りはじめたのは確かだけれど。
そんなことを考えながらも、表面上はいつも通りを決め込んで。
背後から抱きつくように伸しかかってきたうづさんを、自分の顔のすぐ横に現れた形のきれいな額を、軽くペチリと叩いておく。
「チッ、相変わらずつれねーな……昨日はあんなに愛し合ったってのに」
「語弊がありますよ。うづさんとワタシの間に、愛というものはまだ存在してません」
「フーン……まだ、ね」
「なにか言いたいことでも?」
「いいや、今はねぇよ」
「……そうですか」
愛してはいない。まだ。
言いたいことはない。今は。
お互い探り合っているみたいな、期待を含んだ曖昧で意味深な言葉のやりとりに、胸の奥が甘くくすぐられる。