第16章 ハピファミ!16
まさに、晴天の霹靂。
この言葉を実際に使う日がくるとは、人生本当に何が起こるかわからない。
「うづさん……アナタって人は……お馬鹿さんですね」
「っ……うるせェよ」
甘え方を知らずに大人になってしまったような人だと思った。
捻くれていて、自分勝手で、自己中心的で、ワガママで……なのに、甘えることができない。
馬鹿だなぁと、しみじみ気持ちを込めて言いながら、彼の頭を初めて撫でてみた。
まだセットされていない短めの髪はフワフワと立っていて、柔らかで気持ちのいい感触が手に当たる。
うづさんは悪態こそついたものの、その声に力はなく。
抵抗するどころか俯いたままの顔をワタシの肩に押しつけると、両腕を背中と腰に回して力強く抱きしめてきた。
「本当に、馬鹿ですねぇ」
「オマエがバカだ」
「……ええ、そうかもしれません」
「……納得してんじゃねぇよ」
何だかおかしくてクスリと笑えば、気づいてこちらに向けて顔を上げたうづさんも微かに口端を吊り上げて。
自然と見詰め合う形になったワタシたちは、当然のように唇を触れ合わせた。
そっと優しく、浅く深く角度を変えて何度も重ね、甘くやわらかく吸いついて食み。
相手の存在を、熱を確かめては互いの名前を呼んで、繰り返し求め続けた。
気づけば深夜になっていたようで。
遅い帰宅にも関わらず、まだワタシの靴が残っていることに気づいた岡内くんが、もしや……まさか……と焦りを胸に抱えて部屋に飛び込んだとき。
ワタシはうづさんと二人、いかにも事後ですといった様子で仲良く呑気に眠り込んでいた。
愕然と床に手をついた岡内くんの、うづさんを呼ぶ怒りの叫びに寿命の縮まる思いをしながら飛び起きて。
ドクドク激しく鳴っている心臓に動揺しながら頭をフル回転させると、ようやく眠る前のことを思い出し、少しばかり頭が痛くなった。