第16章 ハピファミ!16
それから顔を盛大に顰めたうづさんのご要望により、ワタシと岡内くんで三人分のパスタとスープとサラダを用意して、遅い昼食にとりかかった。
しかし料理に関しては腕も知識も不足している為、ワタシができたことといえば、サラダ用に生野菜をちぎったり切ったり盛ったりしたくらいだ。
岡内くんはもう、いつでも婿にいけると思う。
どこか他所の国であれば、嫁すら可能だ。
口に入ったままのパスタをもぐもぐ味わいながら太鼓判を押したら、そんな太鼓判などいらないと叫ばれて軽く頭を叩かれる。
それを見てぎゃはははっと大笑いしたうづさんの口から、食べかけのパスタとソースがブチまかれ、テーブルの上は大惨事だ。
「うおっ、汚ねぇっ!!」
「うづさんっ!!」
「ぶははははっ……ひー、あぁ、悪ィ、悪ぃ」
ちっとも悪いと思っていない様子のうづさんの頭を、岡内くんと二人で殴って。
ブチまかれたものをティッシュで取ったり汚れを濡れタオルなどで拭いたり。
またそれを横目にのんびり一人で食事に戻ったうづさんに、張本人が何してるんだと突っ込みながら再び殴り。
そんな慌しくて騒がしい昼食を済ませ、さて次はどうしようかと考えているところで、岡内くんへ電話がかかってきた。
バイトをしている洋菓子店からの、緊急出勤願い。
「本当に悪いな」
「いいえ、気にしないでください」
「さっさと行けよ、ハゲ」
「お前は黙っとけ、うづし夫!!……また今度、埋め合わせはする」
「もちろんです。そのときには、ぜひ新作ケーキもお願いしますね?」
にっこり笑ってそう言えば、岡内くんは口角をニヤリと上げながら「わかった」と返事をして部屋を出て行った。
ガチャン、と扉の閉まる音。
玄関に残されているのは、二足の二人分の靴のみ。
ワタシとうづさんの物だ。
「さて。それでは、ワタシも帰りますね?うづさん」
主不在の部屋で押しかけ居候なうづさんと友人であるワタシが、二人で好き勝手に過ごすのもおかしいだろう。
親しき仲にも礼儀あり。
素早く少ない荷物をまとめ、まゆらちゃんへのお土産ケーキの箱を冷蔵庫から取り出すと愛しいまゆらちゃんの、幸せそうで最高にかわいい笑顔が頭に浮かんでくる。