第16章 ハピファミ!16
【青年期5−B】■□作られたケーキは材料がひとつ多い□■
魔が差した。
自分でも何故、あんなことをしたのかよくわからない。
正気ではなかったとしか思えない。
そういう発言をしている人をニュースか何かで見たとき、いつも半信半疑だった。
本当だろうか?頭が朦朧としていたわけでも、身体的に精神的に異常でも極限状態だったワケでもないのに、そんなことが起こり得るんだろうか。
自分の意識がしっかりあるのだから、理性がきくもきかないもやっぱり自分次第で。
魔が差した……だなんて、うっかり心が緩んでしまった上での行動を、ただ弁護しているにすぎないのでは?
―――とか思っていたワタシは、ケーキのハチミツがけよりも甘かった。
さらにチョコやアイスをトッピングしても、まだまだ足りないくらいに。
「なんだコレ、甘いモンだけかよ……あーぁ」
「甘いもので悪かったな」
「とても美味しいですよ、うづさんも食べますか?」
甘いものにはもうウンザリといった表情のうづさんに、さきほどの仕返しとばかりに笑顔ですすめてみる。
自分の使っていたフォークで一番甘さの強かったケーキを大きく切り取り、そのままうづさんの口元まで持っていき「はい、アーン」と言った。
「あ……」
「お……」
「……ッ……ぅげ、クソ甘ぇ」
うづさんは、食べた。
大口開けてパクッと。
ワタシも少しは驚いたが、岡内くんも目を丸くしていた。
おそらく普段は自ら食べようとはしないのだろう。
もしくは素直な態度の方に驚いたのか、はたまた両方か。
まぁ前者だとしても、いつもいつも甘い香りの充満している部屋の中にいては、仕方ないかもしれない。
どんなに美味しかろうと、さすがに毎日はワタシでも飽きる。