第15章 ハピファミ!15
うづさんは、いつもそうしているのか知らないが、一糸まとわぬ姿で現れた。
なにも着てない穿いてない羽織っていない。
上も裸なら下も裸で、つまり局部も丸見えで。
そういった経験がないとは言わないが、好き好んで見たいものではない。
気持ちが完全無防備なところにぶち当たったアレは。
昼の明るい陽射しに照らされ陰影までしっかり見てとれたソレは、食欲を減退させるには充分な効果があった。
「いいから、早くなんか着てこい!」
「十秒以内に視界から消えなければ、問答無用で床に転がします」
「あ~、そうゆうことな。ハイハイ、服着りゃいいんだろ」
ダラけた調子で言うと、うづさんはドカドカうるさく足音を立てながらこの場から去って行く。
その後ろ姿を眺めながら、けっこう良い体つきをしている……などとぼんやり考えていたら家主である岡内くんに謝られ、ちょっぴり邪な考えを浮かべていたことを、逆に心の中で謝り返した。
疲れた顔の岡内くんを眺めながら、こうして常日頃から、うづさんにより色々と迷惑を被っているというか巻き込まれ事故に遭っているのだろうと容易に想像できてしまい。
同情ついでに岡内くんへ笑いかけ、少し高い位置にある肩をぽんっと優しく叩いたら、その肩が力なく下がりガックリ項垂れてしまった。
うづさんには一度、反省という言葉を身に教え込んだ方がいいかもしれない。
その方が世の為人の為、岡内くんの為である。
そんな少々物騒なことを頭に思い描きながら、目の前まで下がった岡内くんの頭を撫でてみたらガチッと固まり、首から上の肌が見る間に赤く染まっていく。
予想外な反応が面白くて、つい吹き出して笑えば当然ながら怒られたけれど、睨んでいても赤い顔のままなものだから、さらにお腹を抱えて笑ってしまいまたまた怒られた。
このとき、さっさと帰るべきだったのかもしれない。
別に命に関わる重大事件が起きたとか、そういうことではないし、自分にとっても相手にとっても、それはほんの些細な出来事だった。
けれど、後になってわかる。
これは自分にとっても相手にとっても周りにとっても、重要な出来事だった。
ワタシがまゆらちゃんのことを、唯一無二の大切な人だと認識した瞬間くらい。
だからワタシは。
この日のことを一生、忘れることはないだろう。
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