第15章 ハピファミ!15
【青年期5-A】□■それはチェシャ猫の道しるべ■□
ケーキを食べに行くことが人生の分かれ道だなんて、いったい誰が思うだろう。
「明日、うちにこないか?約束してたケーキ、食わせてやるよ」
「えっ、行きます行きます、もちろん!ずっと楽しみにしていたんですよ」
「じゃあ、あとで住所教えるから」
「はい」
「……あ―――と。うづし夫がいたりするかもしれないが、気にするな」
「はい?」
少なくとも、ワタシは思わない。
だからこそ、気軽に行くことを決めた。
だからこそ、いつも通り愛するまゆらちゃんに笑いかけて家を出た。
だからこそ、選択してしまった。
自分のみならず、まゆらちゃんの人生にも関わる重要なことを。道を。
選んでしまった。
そうとは気づかずに。
「こんにちは、岡内くん」
「ああ、上がってくれ」
「お邪魔します…………あれ、うづさんは?」
「……まだ寝てる」
昔からの約束、岡内くんの手作りケーキを食べる為に彼の家までやってきた。
岡内くんの存在はまゆらちゃんにも話していたから、お土産にケーキを持って帰ったらきっと、とても喜んでくれるだろう。
そして可愛い笑顔を見せてくれるに違いない、と。
いつもながらワタシの頭の中は、愛するまゆらちゃんで満たされていた。
「うわ……これ、全部、岡内くんが作ったんですか?」
「まぁな、気に入ったか?」
「はいっ、全種類、お土産に持って帰ります」
「……例の、妹にか」
「まゆらちゃん、絶対に喜びますよ~」
テーブルの上に並べられた色とりどりのケーキたちは、どれもキレイで可愛くて美味しかった。
細かいところまで丁寧な作りは、岡内くんらしい繊細さを感じた……なんて、そんなことさすがに素面で言えるほど天然でも純粋でもタラシでもなかったから口には出さず。
ただ美味しさに口元をゆるめたまま、黙々と食べ続けた。