第14章 ハピファミ!14
同じく、エナさんにこぼしてみたら。
「やだっ!大丈夫ぅ?わたるちゃん。もう金輪際、あのクソヤローに近寄ったりしちゃ駄目よー。何かあったら、いつでもあたしに言ってね!」
「あはは、ありがとうございます、エナさん。でも大丈夫です!見た目ひょろいですけど、これでもけっこう強いんですよ?ワタシ」
「いや~ん!わたるちゃんって、ほんっとカワイイわあ~!!」
「っ、く、苦しいです……」
たまたま、店に飲みに来たキワコさんに喋ってみたら。
「アンタ、まゆらに怒られたでしょう」
「……わかりますか」
「馬鹿ね。アイツなんて、ほっとけばよかったのに。どうせ自業自得なんだから」
「なんというか、ワタシもけっこう目をつけられやすいもので……」
「はぁ……どうしても巻き込まれてしまうというワケね」
「はい、そうなんですよ。残念ながら」
皆さん、揃いも揃ってなかなか正直な人ばかりのようで。
誰一人として、彼のフォローをいれる様子はまったくといっていいほど見られなかった。
―――という会話の内容を、しょうこりもなく遅刻してきた本人に、かいつまんで話してみた。
「クソッ、なんて薄情な奴らだ!」
「じゃあ、チンピラ風情な方とのケンカに女であるワタシを巻き込んだあなたは、非道なヤツと言われてもしかたありませんよね」
「……オマエは、俺より強いだろうが」
「まぁ、否定はしません」
「俺だってなあっ、好きでケンカになったワケじゃねーっつの!」
「それはもう、嫌になるくらい聞きましたよ。聞き飽きましたよ」
「うるせェ!ついでにあと一回くらい聞いとけっ」
昨晩。仕事を終えた彼は、すれ違いざまに軽く腕がふれた程度だったにもかかわらず柄の悪い二人組みに因縁をつけられ。
短気な上に目つきも態度も悪いとくれば、喧嘩に発展するのは避けられず。
二人のうちの一人と互いに胸倉をつかみあった状態のとき、たまたまその場に居合わせてしまったワタシと目が合い、ついぽろっと声に出してしまったのだ。
「わたる」……と。