第14章 ハピファミ!14
【青年期4】■□チェシャ猫さんとチェシャ猫ちゃんの道は同じで違う□■
バイトにもずいぶん慣れてきた近頃、ワタシはちょっとばかり気が緩んでいたらしい。
結論から言うと。
愛するまゆらちゃんに。
愛しい愛しい我が片割れに。
可愛いくてしかたない妹に。
怒られた。
本気で。
叱られた。
衝撃のあまり思わず泣きそうになったら、素早く感づいたまゆらちゃんが少しだけ怯んだのがわかった。
ワタシは滅多に涙を見せることをしないので、こういうときには助かったりする。
でもそれは決して嘘泣きなどではなく、本気泣きに限定されていて。
本気の涙だから、愛する妹は優しくしてくれるのだ。
そこの辺り、まゆらちゃんもさすがは女というべきか。
昔、一度だけ泣く真似をしたときなど、まだ小学生だったにも関わらず鋭く見抜かれたものだ。
「わたるちゃん、聞いてるの?」
「ああ、うん、聞いてますよ」
「じゃあ、スマホ持ってくれる?」
「うーん……あれ、持ってるの人にバレると面倒なんですよね。高いですし」
「もうっ、だったら危ないことは二度としないって約束して!」
「…………」
「約束、して」
「…………」
「……スマホ」
「……持ちます」
ワタシはこの日以降、便利なのはわかっているけど面倒くさくて今まで持たなかった連絡道具を持ち歩くことになった。
まぁ、自業自得なのだが。
まゆらちゃんいわく「危ないこと」に首を突っ込む原因を作ったのはワタシではない、ということだけは言っておきたい。
けれど、それを知られたら知られたで今のバイト先にまゆらちゃんが乗り込んできそうなので、発する寸前で言葉をとめて飲み込んだ。
翌日―――バイト先にて、友人である岡内くんに愚痴ったら。
「アイツと関わると、ろくなことがないから気をつけろ」
「……岡内くん。なんというか、色々と大変だったんですね」
「ああ。ちなみに、現在進行形で迷惑かけられっぱなしだ」
「ご愁傷様です」