第13章 ハピファミ!13
「なによ、あんた。今頃きたわけ?ちゃんと仕事しなさいよ」
「うづし夫さん、一時間の遅刻です」
「うっせーなぁ」
「うるさいとはなによ!」
「キワコさん、いいんですよ」
「ほら、こいつもそう言ってんじゃねーか」
「あんたは黙ってなさい」
「遅刻した分だけ彼の給料が地味に減っていくだけですからね、ワタシは痛くもかゆくもありません。気にするだけ無駄です、時間の損です」
顔の筋肉を総動員して、自分でも素晴らしいと思えるキラキラ輝かんばかりの作り笑いを披露してみる。
キワコさんはやる気をそがれたように溜め息をついて口を閉じてくれたし、うづし夫さんはウゲッと嫌そうな顔で反論するのをやめた。
ああ、頬が筋肉痛になりそう。
この数ヶ月間、彼とは勤務態度について散々もめた。
そのたびにワタシが笑顔で皮肉や嫌味を言ったり、実力行使に出てきたのを軽くあしらったり返り討ちにしてやる内に、彼はワタシに対抗するだけ無駄だと結論づけたようだ。
口で言っても勝てない―――そもそも彼に非があるのだから勝てるわけがない。
力にものをいわせようとしても負ける―――単純な力比べならば彼が勝っただろうが、仮にも数年前まで習っていた武術で師範代の実力を有したワタシが、いくら今はやっていないとはいえド素人にただのケンカで負ける筈がない……というより、もし負けていたら真剣に体を鍛え直さなければならなかっただろう。
うづし夫さんとのケンカもどきにもすっかり慣れてきていたので、少し寂しい気がしなくもない。
慣れってコワイな。
「そうそう、キワコさん」
「んー?なによ」
「ワタシが問題を起こした原因、この人ですよ」
行儀悪くも、うづし夫さんを人差し指で示しながら言えば。
キワコさんは妙に納得してくれて、後にはワケのわからない顔で目を瞬かせるうづし夫さんだけが残った。
その顔が普段のいかにも悪そうな表情とはうってかわって無防備で。
少しだけ、ほんの少しだけ。
カワイイ……かもしれない。
そう思った。
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どちらかと言うとヒロインではなくヒーローな位置づけのわたるさん。
そして、うづし夫さんは悪役のちヒーローの好敵手や親友ポジになる系……だったりしたら面白い。
確実にヒーロータイプでは無いかと思われる、若い頃の眉ナシ金髪ガラ悪な渦潮。