第13章 ハピファミ!13
「ひさしぶり」
「お久しぶりです。どうしてここに?」
「ココ、あたしのいきつけの店なのよ。まゆらから、あんたが働いてる店の名前を聞いて驚いたわ。よく夜に働こうと思ったわね、あのこを一人で家に置いて」
「ええ、まぁ。あの、まゆらちゃん、他にはなにか言っていませんでしたか?」
「いいえ。とくに……ああ、そういえば」
「なんです?」
「あんたが何の問題もなく、無事に仕事できているのかって。心配はしていたわね」
「…………」
かわいいかわいい我が妹は、けっこう心配性だ。
まぁ、過去に男装もどきで話題の人物になってしまったり、まゆらちゃん関係だと沸点が異常に低くなったりと、問題を起こしすぎてしまった自分のせいだという自覚は一応ある。
あとは、まゆらちゃんにとってもワタシにとっても、お互いが唯一、生存している肉親であり家族であるという理由が大きいのだろう。
これでもしも、バイト五日目にして先輩にあたる人物と揉めた上に、その後も殴ったり蹴ったりあまつさえ投げ飛ばした末、主に一方的に力づくで問題解決しましたなんて言ったら説教はまぬがれない。
さらに今後は厳重注意のオマケ付きに違いない。
「その沈黙は……起こしたわね、問題」
「……いえ、その、なんといいますか……これには、深くて浅い事情がありまして」
「深いのか浅いのか、どっちなのよ?まぁいいわ、まゆらには黙っといてあげる」
「っ、ありがとうございますっ、キワコさんっっ」
「まったく、あのこに心配かけるのもほどほどにしなさいよね、仮にも姉なんだし」
「はい、以後気をつけます」
まゆらちゃんには黙っていてくれる―――そんな言葉にホッとしたのもつかの間、キワコさんは「で?」と話の先をうながしてきた。
ああ、やっぱり話さないといけないわけですね……諦めて正直に口を開こうとしたとき。
「なんだよ、お前ら。知り合いか?」
問題の人物が重役出勤してきた。