第12章 ハピファミ!12
【青年期2】■□最高と最低は紙一重の折り紙でできている□■
第一印象は「最低」の一言。
バイトに入って五日が経ち、仕事にも少し慣れてきた頃。
同じ時間帯に働いているというもう一人の従業員と、ようやく初顔合わせをした。
なかなか会わないからてっきり曜日が会わないかもしくは休みを取っているのかと思っていたら、どうもサボッていただけらしい。
それも堂々と。
こういうタイプの人間と会うのは初めてだったが、まぁ狭くも広い世の中だ。
色々な人がいるし自分と違う考え方を知っておくのもたまにはいいだろう。
そう思って穏やかな対応を心がけながら、できるだけ自然に見えるであろう笑みを浮かべて挨拶をしてみた。
「はじめまして。五日前からバイトに入ったわたるです、よろしくお願いします」
「……ふーん。ま、よろしく」
「ちょっと、アンタねぇ!せっかく、わたるちゃんがあいさつしてんだから、きちんと自己紹介くらいしなさいよ」
「あー、うるせェなぁ」
「なんですってぇ!?」
「おい。二人とも、うるさいぞ」
怒ったエナさんと態度の変わらないその人物の間に、岡内くんが割って入りなんとか騒ぎは治まったものの、一気に店内の空気は悪くなった。
もはや「これから一緒に仲良く働きましょう!」などといった雰囲気は微塵もなく、居心地の悪さに無理やり笑みの形をキープしていた口角が何度もピクピク痙攣しかけるのを感じながら、この日の開店準備は整った。
「わたる、暇だったらあっちのテーブルでも拭いてきてくれ」
「わかりました」
「あら、それよりあたしとお喋りしましょうよ~」
「エナさん、すみません。一応、今は仕事中ですから」
「エナ、あっちの客がお前のこと呼んでるぞ」
「えぇー!はぁ、しょうがない。わたるちゃん、いってくるわねぇ」
「いってらっしゃい」
「さっさと行け」
こんなのんびりした会話ができるくらい、この店はいつでも客が少ない。
これでちゃんと本当に経営していけるのか?と思うほどに。
でもまぁ、確かに毎晩人はくる。