第8章 ハピファミ!8
「まゆらちゃん!美味しいケーキ屋さん、発見しましたよっ」
「ええっ、どこどこ?」
「道場の帰り道にあるので、今度お土産買ってきますね」
「うん!ありがとう、わたるちゃん」
心の底から嬉しそうに笑うまゆらちゃんに、ワタシの顔もやばいくらいに緩む。
愛するまゆらちゃんのためなら、どんなに遠い場所のお菓子だって手に入れてみせます!
ついそんな言葉をポロリとこぼしてしまったワタシに。
「わたる、そんな言葉をいったいどこで覚えてきたの?お願いだから、よそのお嬢さんには言わないように気をつけてちょうだい」
という母親からの突っ込みが入った。
さらに、とどめとばかりに「女タラシな娘だなんて、お母さん困っちゃうなぁ」などと言われ、とても微妙な心境になった。
きょとんとした表情のまゆらちゃんだけが唯一の癒しである。
きっとこんな風に、愛する片割れにもワタシの知らない多くの出逢いがあるのだろう。
それを素直に喜ぶのとは反対に「寂しい、イヤだ」と、どうしようもなく狭量な心が呟く。
どうかせめて、全てとは言わない。
あなたが感じたものたちを、十分の一でも百分の一でもいいから。
ワタシにも共有させてほしい。
それは、ささやかな願い。そして、欲張りな望み。
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オカウチ少年とケーキ屋のオジさんに遭遇。
岡内の下の名前がわからず見つからず、かなり探した記憶が懐かしい……そしてまた忘れましたお約束。
(ここのお話は「カトゥル・カール」を参考に)