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【ハッピー・ファミリー】ハピファミ!

第9章 ハピファミ!9


【少女期4】□■ノートに記された約束のケーキ□■



ワタシが前世と呼んでいる「夢名字夢名前」の記録を、ノートに書き記すことにした。

前世であろうがなかろうが、生まれ出た瞬間から持っている一人の人間の記憶。
これはどう考えてもおかしなことであるし、不思議で奇妙な出来事だ。
しかし、このまま成長していくうちに「夢名字夢名前」の記憶は今のワタシである「わたる」の記憶に埋もれてどんどん薄れていき、しまいにはそんな記憶があったことすら忘れてしまうかもしれない。

とくに嬉しいことではないが、せっかく貴重な体験をしているのだから全てを忘れてしまわぬうちに、覚えているぶんだけでも残しておこうと思ったのだ。

いざ文章におこそうとすると、何をどのような順番で書いていけばいいのか悩んだが、とりあえず思い出したことをそのまま日記のように、時には箇条書きメモのようにして書いてみた。
毎日毎日、積み重ねて書き続けていったノートは気づけば十ページ二十ページと埋まっていき、これをまとめて一つの物語が作れそうなほどになった。

こういった作業の中、ふと引っかかりを覚えた。

「まゆら」ちゃんに、「オカウチ」くん。
この名前を、ワタシはいつかどこかで聞いた……もしくは見たことがあるような気がしてならない。
でもいったい、いつどこで二人と同じ名前を目に映し、耳に入れたのだろう。

思い出せないことになんだか頭がムズムズしてくるが、考えたところですぐに分かるものでもない。
夢名字夢名前の記憶に関わりがあるかは不明だが、書き記している最中に気にかかったことなので、一応ノートの最後のページに小さく二人の名前を書いておいた。

はっきりしていることは、ワタシにとって二人は今を共に生きている人だということ。

まゆらちゃんは、ワタシの愛する片割れで、かけがえのない大切なかわいい妹。
そしてオカウチくんは、笑顔の爽やかな少年で、初めてとも言える普通の友人。

それだけだ。

……そう、ただそれだけ。
それだけわかっていれば、いい。
なにも問題はない。

唯一の妹に、貴重な友。
大切だと思いたい両親。
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