第1章 ハピファミ!1
それから少し月日が経ち。
なんとか落ち着いた私は、とりあえず「まゆら」の真似をして過ごすことにした。
最終的に大人ともいえる年齢の記憶が強く残っている私には、今さら幼児の仕草や態度、感情の動き方や喋り方なんてさっぱり分からなかったのだ。
この行動はそれなりに上手くいったらしく、両親もようやく子供らしさを見せはじめた私の様子にほっとしたのが伝わってきた。
双子といえど、数分の差で世間では「姉」と「妹」にわかれるもの。
それでいうのなら私は「まゆら」の姉で、「まゆら」は私の妹であった。
前世と思うことにした記憶で、私は末っ子だった。
妹という存在も初めてならば、小さい子供に接することもはじめての経験……いわゆる未知との遭遇。
どうすればいいものか悩みながら喋ることなく接する私にも、「まゆら」は無邪気に笑いかける。
純粋な笑顔が可愛くて、真っ直ぐに見返りなく向けてくる愛情が、素直に嬉しくて。
いつの間にか、自然と笑えるようになっていた。
幼子がするような笑みを浮かべることはできないけれど。
「まゆら」のおかげで、私は、自然に笑う術を見つけたのだ。
□next→2■
ハッピーファミリー略してハピファミ、安直タイトル。
産まれたけれど、まだ生まれていない、そんな感じです。