第6章 ハピファミ!6
【少女期1】□■75日の美少年は本を愛ではしない■□
小学校に上がっても、ワタシの片割れである愛しのまゆらちゃんは可愛い。
ピッカピカの真新しいチョコレート色のランドセルを嬉しそうに背負って、まゆらちゃんがワタシに向かって手を伸ばす。
「わたるちゃん、いこう?」それに「ハイ」と返し、手と手をつないで仲良く通学路を歩く日々。
ワタシの背中には、真剣におねだりをして手に入れたダークブラウンのランドセル。
男の子にしか見えない短すぎる髪型だから、暗い色の方が格好良く見えるんじゃないかと思ったのだ。
予想通り、フワフワ短髪にこのランドセル、黒ブレザーに白シャツと赤い模様が入った黒の中途丈パンツがよく似合っている。
本日のまゆらちゃんはワタシと対になるような形で、赤を基調に黒の模様が入ったワンピース。
どちらも母親プロデュースなのだが、毎日がファッションショーのようで、近所ではちょっとした有名人になりつつある。
まゆらちゃんと一緒にかわいい格好ができるのは楽しいのだが、他人の視線が少々うるさい。
いやしかし、私服の小学校で本当によかった。
自然と逆立つほどの短髪に暗い色のランドセルを背負って女子の制服は、さすがに違和感が漂ってしまう。
ひとつ間違えれば、イジメの標的にされやすそうでもあるし。
じゃあ男子みたいな格好をしているのはいいのか?と問われれば、それは―――いいのだ。
すぐには女子だとバレないくらい完璧に、ときに男子よりも男子らしくあれば、意外にも女子の皆さんは受け入れてくれるものである。
中途半端がいちばんよろしくない、やるなら徹底的に。
いつの時代も、男装の麗人というものは憧れの対象に入りやすい。
プラス、からかう男子が多い中でまゆらちゃんに常に優しく接しているワタシは、自然と女子生徒からの株が上昇。
二年生、三年生……と学年が上がっていくうちに「理想の彼氏って密かに人気なの」だと、一年生以降ずっと違うクラスな愛しのまゆらちゃんに教えてもらった。