第5章 ハピファミ!5
昨日。
「まゆら、きょうはおかあさんしていいって!」
「そっか。よかったね、まゆらちゃん」
「うん!わたるちゃんは、むすこやくだよ」
「じゃあ、本は読めないかな?」
「ううん。えっとねー、びょうきがちで、べっどのうえでほんばかりよんでる、んと……あ!あのね、はっこうのびしょうねんっ、だから、ほんよめるよ」
「……まゆらちゃんが考えたの?」
「ちがうよー。せんせぇがね、おしえてくれた」
「…………ああ、なるほど」
今日。
「まゆらちゃん。コレ、なーに?」
「めがねだよー、おりがみでつくったの!」
「メガネ……かける役なの?」
「うん。わたるちゃんは、くーるなところがにんきのおいしゃさんだから、めがねがひつようなんだよ」
「本、読んでていい?」
「いいよー」
なかには「お母さんと恋仲になってしまった、娘の家庭教師」なんて役もあったりした。
なかなか心臓に悪い役どころが満載で、今ではすっかりドラマ並みな設定の「ままごと」にも慣れてしまった。
次は何が出てくるのかと毎回、実に興味深い。
ただ、純粋で汚れないという子供像は、ミクロサイズにまで粉砕されてしまったけれど。
まゆらちゃんが全ての意味を理解していないことだけが、せめてもの救いである。
ちなみに余談だが、喋り方まで徹底されたこの「ままごと」は、ワタシに「ですます」口調の癖をつけた。
「おはよう、わたるちゃん」
「おはようございます、まゆらちゃん」
これも一種の個性確立?意識せずに、第三段階ができあがったらしい。
両親は不服そうであったが、まゆらちゃんは気にしていないようなのでわざわざ直すこともないだろう。
今日もまゆらちゃんとワタシの世界は平和だ。
□幼少期end■next→6
保育士さんの入れ知恵によるまゆらちゃんの言動に、毎回ドッキドキなわたるさん。
リアルおままごとの中で、ドラマ何本分?といった様々な役をこなしています。