第12章 君に素直になる方法
「おっ、来たね!音駒の皆さん!今日はケチョンケチョンに倒すから!」
体育館に入るなり、木兎が大きな声でそう言ってくる。
やっくんや山本やリエーフ辺りは今にも飛び掛かって噛みつきそうな勢いだ。
「主将の挨拶とは思えねぇな、木兎。」
「出たな、黒尾君!黒尾は特にケチョンケチョンにするから!俺、絶好調だし!」
出たなって…最初から見えてただろうが。
和奏と上手くいっていて絶好調とか…負ける訳には行かないだろう。
短いアップの後にすぐ試合に取り掛かる。
乗ってる時の木兎はヤバイと知っていたけど…今日はマジでヤバイ。
止められないスパイクに、ジリジリと点差が開いて防戦一方だ。
「個人的な用件ってやつも、こんな風に役立つなら悪くはないですね。」
2セット目の途中に赤葦がネット越しにそう言ってきた。
好きな女も手に入れて、その上、バレーまでこの調子とか…正直セコいだろ。
ピーッと試合終了のホイッスルが響いた。
何とかフルセットには持ち込んだから…ケチョンケチョンとまでは言わないだろうが、負けは負けだ。
特に今日の負けは、絶好調の木兎を止められなかった守備の問題だ。
「ねぇ、黒尾君。少しいい?」
ベンチで水分補給している俺の所に木兎がやってくる。
少しいい?って…そんな事聞いてくるキャラかよ!
体育館の外に促されれば、大抵何の話かは想像がつく。