第12章 君に素直になる方法
「じゃあ、たっぷり愛してやるから覚悟しろよ。」
和奏をベッドに押し倒す。
この前、和奏を押し倒した時も、興奮はしてたけど…それとも何だか違う。
お互いが思い合っているとわかっている…なんだかフワフワとした気持ちだ。
「黒尾…先輩。一つお願いがあります。」
チュッチュッっと何度もキスを落とす俺の隙をついて、和奏がキッパリ言う。
「何だよ。やっぱりやめて下さい以外なら、何でも聞いてやる。」
少し悩んだ後に、顔を真っ赤にしながら和奏が言った。
「初めて…みたいに優しく抱いて下さい。」
その言葉に全てを察した。
あの時…初めて俺と和奏が身体を重ねた時…あれが和奏にとって初めてだったんだと。
本当に…クソ野郎だな。
正直…どうやって抱いたかも覚えてない。
でも、自分の性欲優先の…初体験の奴相手には酷い抱き方だっただろう。
後悔してもしきれねぇ。
謝ろうと和奏の顔を見ると、謝罪は求めてないのだと清々しい程顔に書いてある。
今になって、和奏の考えている事がわかるとか…。
もっと早く気付けばよかった。
だから、和奏が望んでいるであろう…そして、俺の望みを口にする。
「今後、一生優しく扱ってやるよ。」
そう言うと和奏が心底嬉しそうに笑った。
和奏が笑うだけで、俺までこんなに幸せな気分になれるなら…和奏が隣に居てくれるだけで、俺の幸せは確定だろう。
和奏がいつもこの笑顔で笑ってられるように、絶対に強がりの嘘などつかなくていいように…俺が守る。
深く心に決意して、和奏にキスを落とした。
end.