第11章 自分に素直になる方法
「木兎さん…私、今回の事は別に怒ってないんです。」
木兎さんが何とも言い難い表情で私の言葉の続きをうながす。
「と言うか…怒れなかった。そりゃ、少し驚きはしましたけど…考えれば考える程、木兎さんはモテるから、そんな事もあるだろうなぁって。自分でも悲しくなるくらい怒りは湧いてこなかったんです。その時に…気付いてしまいました。自分がちゃんと木兎さんに向き合って無かった事に。だから、私に怒る資格なんてありません。このまま…木兎さんと付き合う資格も。」
言い終わった私をはははと、軽い笑いを漏らしながら木兎さんが見た。
「まさかの、めちゃくちゃ怒って…殴ってくれた方が嬉しい展開。」
「木兎さん…ごめんなさい。」
今度はこちらがガバッと頭を下げる番だ。
木兎さんの悲しそうな表情なんて、初めて見たから…思わず目をそらしてしまったのもあるけど…本当に反省している。
「和奏ちゃんに謝られると、俺困るよ。顔を上げて?今更、こんな事聞いても仕方ないってわかってるけど…今回の事が無ければ、俺と付き合ってたかも?」
今回の事が無ければ…きっと、木兎さんと付き合って居ただろう。
そして、きっとそれなりに幸せになったいたはずだ。
ゆっくりと頷けば、頭を抱えた木兎さんが大袈裟に空を仰いだ。
「うわー。後悔してもしきれないなぁ。」
私も…いつかこの決断を後悔するのかもしれない。
真っ直ぐで、純粋で、たまに浅はかだけど…私のことを大切に思ってくれる木兎さんの彼女になれば、きっと笑って過ごせるはずだから。
「木兎さん…本当にありがとうございました。」
こんな私を好きだと言ってくれて。
「……。最後にもう一つだけ教えてくれる?」
「何ですか?」
じっとこちらを見つめる木兎さんの瞳が、嘘は許さないだろう。
「黒尾君と付き合うの?」
今度は首を横に振る。
いくら望んでも、そうはならないだろう。
「黒尾先輩には…何とも思われてませんから。」
嘘じゃないので、しっかりと木兎さんの瞳を見ながらそう伝えた。