第11章 自分に素直になる方法
黒尾先輩が去った部屋で、ただボーッと座り込む。
放心状態で身動きも取れない。
そんな私の視界にふと、白いビニール袋が入ってくる。
コンビニの物を思われるそれは、先程まではそこに無かった物で…。
黒尾先輩の忘れ物だ。
黒尾先輩が家を出てからどれくらい経っただろうか?
行き先は想像がつくけど…追いつく事は困難だろう。
急ぐものではないだろうか?
ビニール袋の中身を覗いて、再び固まる。
中に入った数種類のゼリーやスポーツドリンクは、明らかに病人へのお見舞いセットといった品揃えで…。
私に…?
たぶん、そうだろう。
体調不良と言って学校を休んだ私の為に買ってきてくれたんだ。
黒尾先輩は…本当にズルい。
ビニール袋をギュッと胸に抱きしめる。
一度フッた相手にこんな気遣い…。
黒尾先輩は何を考えているんだろうか。
「は?終わったセフレ達?連絡なんて取る必要ねぇだろ。終わってるんだから?」
以前に、関係を絶った後のセフレと連絡を取る事があるか聞いた時、黒尾先輩は何を聞いてるのか心底わからないような顔をしてそう言っていた。
あの時の黒尾先輩の台詞と、目の前のビニール袋の間にある違和感の正体がわからない。
黒尾先輩はズルい。
こうやって、私の決心を簡単に鈍らせてしまうんだから。