第11章 自分に素直になる方法
「落ち着いたか…?」
黒尾先輩がポンポンと私の頭を撫でている。
自分から誘っておいて…このざまだ。
黒尾先輩が怒ってないのが、唯一の奇跡だろう。
「すいません。本当に…。」
「木兎と何かあったのか?」
間髪入れずに聞いてくる黒尾先輩に、もう一度決心を固める。
もう…本当に終わりにするんだ。
だから、黒尾先輩には木兎さんと喧嘩したと言っておくのが一番いいだろう。
「私…木兎さんにフラれちゃって。木兎さん、他の女の人とも関係を持ってて…。モテるのなんて、知ってたつもりなのに…何だか凄くショックで。黒尾先輩に…甘えちゃって、本当に最悪ですよね。ごめんなさい。」
だから、黒尾先輩はもう私の事なんて気に掛けないで下さい。
私はそんなに強くないから。
黒尾先輩が気まぐれに気に掛けてくれる度に、甘えて、舞い上がって…そして落ちるだけだから。
「悪いことなんて、なんもしてないだろ?木兎の事も…俺に任せとけ。死ぬほど反省させて、和奏の所に謝りに来さすから…そしたら、許してやって。」
今だって、木兎さんとの事を応援してくれる黒尾先輩を真っ直ぐ見つめ返す事も出来ない。
黒尾先輩が部屋を出て行く前に、もう一度ギュッと抱き締められる。
思わず背中に手を回しそうになってとどまった。
さよなら、黒尾先輩。
心の中で密かな別れを告げて。