第10章 君との向き合い方
「え?だって黒尾君は和奏ちゃんの事フッたんじゃ…。」
その通りだよ。
その事については研磨に既に散々馬鹿にされている。
「フッてから、好きだって気付いちゃ悪いかよ。ぼやぼやしてると横から掻っ攫うぞ。」
「何で…今、掻っ攫わないのさ?」
「和奏がお前と付き合う事を望んでるからだろ。」
うーん。とわざとらしく唸る木兎。
「何だよ。」
「何か…黒尾君っぽくない。」
木兎の発言に思わず笑いが漏れる。
俺っぽくない…。
そんな事、俺もとっくに気付いてるよ。
「おかしけりゃ、笑えよ。」
別に笑われたっていいって思ってる事自体が俺らしくない。
他人に笑われる事なんて大嫌いだったのに。
「え?何で笑うの?なんか…いつものチャラくて適当な黒尾君より、今の方がカッコいいよ?」
キョトンとした木兎の様子から、からかってる訳ではなく、本心からそう言っているのが伝わってきて、その様子が可笑しくて、また笑えてくる。
「お前のそういうところも、よっぽどカッコいいけどな。ってか、男に口説かれる趣味はねぇんだよ。さっさと和奏の所へ行けよ。」
木兎の背中をドンっと押してやる。
「まぁ、会わないことには始まらないからね。会ってもらえるように頑張るよ。」
いい顔で笑う木兎を見て、俺らしくない事をするのも悪くないなんて思っていた。