第10章 君との向き合い方
「魔がさしたって…そんな中途半端な気持ちで和奏に手出してんじゃねぇよ。」
グッと木兎の胸元を掴む。
殴るつもりはないし、向こうだってそんな事はお見通しだろう。
「黒尾君は…いいよね。何しても和奏に好かれて。こんな時ばっかりヒーローみたいに出て来てさ。」
至近距離でキッとこちらを睨んでくる。
何で、こいつは和奏がまだ俺を好きみたいな言い方をするんだ。
ムカつき過ぎて本気で殴りたくなってきた。
「和奏の気持ち…考えてやれよ。あいつ、近々お前と付き合うんだって俺に言ってたんだぞ。」
「え?和奏ちゃんが…黒尾君に?」
心底意外そうな顔をしている。
こいつ…本気で和奏の気持ちがわかってないのかよ。
「とっとと和奏に謝りに行けよ。」
「昨日から電話しても、家の前まで行っても…会ってくれないんだよ。」
今日まで木兎が謝りに行ってないはずはないと思っていたけど…和奏が追い返してたのか。
さっきの和奏の様子を思い出すと、それも頷ける。
ヤケになって、俺と寝ようとしてたくらいだし。
「そんなにしょぼくれてる奴に和奏渡すの馬鹿らしくなってきた。」
俺なら和奏に会いたくないと言われたくらいじゃ引き下がれない。
俺なら…俺なら…。
煮え切らない木兎の態度にそんな思いが湧き上がってくる。