第10章 君との向き合い方
「なんで…黒尾君が来るのさ?」
ブーっとふくれっ面で現れた木兎。
「男のふくれっ面見に来たわけじゃねぇよ。」
「わかってるよ。和奏ちゃんのことだろ?黒尾君は関係ないよ。」
せっかく仲直りに一役買ってやろうと思っているのに、木兎の口ぶりに思わず怒りが湧いて来る。
「関係あろうが、なかろうがどうでもいい。それより、どういうつもりだよ。和奏に本気なんじゃなかったのかよ。」
「本気だよ。本気で大切に思ってたから、何ヶ月も手を出さないように頑張ってたのに…キスだけであんないい反応されたら…流石の俺も限界。だから、そんなタイミングで…ちょっと魔がさしただけだよ。反省してる。」
木兎が明らかにしょぼんとして答える。
そんな木兎を見て、色んな感情が湧き上がる。
まだ手を出してないとわかった安堵感とか、
キスだけでも震える程ムカつく事とか、
魔がさすという表現が、同じ男としてはしっくり来るような…。
でも、結局最後にはさっきの泣いていた和奏の顔を思い出す。
俺だったら…。
俺だったら泣かせないって言えるだろうか?
和奏は泣かなくていいように俺の前で自分を作ってたんじゃないのか…?
でも、今なら…絶対に泣かせない。
強がりの嘘も見抜いてやる。