第10章 君との向き合い方
梟谷には数え切れない程来ているが、いつもジャージだから制服で来たのは初めてかもしれない。
他校生ですよーと大声でアピールしてるみたいなもんだし…目立っている。
和奏の家を出た足で、ここまで来た。
俺が木兎の恋路をお膳立てする日が来るとは…。
しかも、その相手が自分の惚れてる女とか…。
笑えないのを全て通り越して、面白くてたまらない。
「珍しいですね。黒尾さんが木兎さんのように連絡もなく他校を訪ねて来るなんて。」
体育館に差し掛かると、いち早く赤葦がこちらを見つけて声を掛けてくる。
「別に偵察じゃねぇよ。だいたい、そろそろ練習終わる時間だろ?今日はおたくの主将に個人的な用件で来たんだよ。」
だいたい、こっちのこれしきの不法進入が咎められるなら、木兎の普段の行為は何だと言うのか。
「個人的な用件…って、物騒な響きですね。…皐月さんの事ですか?」
木兎が和奏の事を連れ回してたなら、赤葦も当然面識があるだろうから、赤葦から和奏の名前が出ても不思議はない。
「話が早いな。きっと不調だろう主将の調子を取り戻してやるって言ってんだから、とっとと連れてこい。」
しばらくの間、じーっとこちらを無言で見つめた後に、わかりました。とだけ言い残して体育館へ消えていく赤葦。
マジで不調かよ。