第10章 君との向き合い方
「落ち着いたか…?」
まだグズグズと鼻をすする度に音がしそうな和奏の頭をポンポンと撫でる。
「すいません。本当に…。」
「木兎と何かあったのか?」
最初に和奏が泣いたのも、木兎の話が出た直後だった。
あいつのせいで和奏が泣いていると思うと、無性にイライラするけど…。
でも、嫌われてもいいから、和奏には笑顔になってもらおうと、そう決心したばかりだ。
「私…木兎さんにフラれちゃって。木兎さん、他の女の人とも関係を持ってて…。モテるのなんて、知ってたつもりなのに…何だか凄くショックで。」
和奏が木兎にフラれる?
想像出来ないシチュエーションだ。
木兎と言えば、ここ数ヶ月、和奏、和奏と煩くて仕方なかったじゃないか。
そして、目の前で落ち込む和奏を見て、俺の方が気持ちが沈むのを感じる。
俺が他の女と寝てても平気そうだったくせに。
木兎の事がそんなに好きかよ。
それが和奏の本音なら、受け止めたい。
ちゃんと受け止めて、和奏が笑えるようにしてやりたい。
「黒尾先輩に…甘えちゃって、本当に最悪ですよね。ごめんなさい。」
最悪なのは、これだけ和奏から思われているのに、他の女と寝た木兎だろう。
あと、それに少しでもつけ入ろうとした俺。
和奏に笑って欲しいなら、俺のこの気持ちは伝えるべきじゃないな。
「悪いことなんて、なんもしてないだろ?木兎の事も…俺に任せとけ。死ぬほど反省させて、和奏の所に謝りに来さすから…そしたら、許してやって。」
和奏が俯いたまま、頷いたのが見えた。
乱れた和奏の服装を整えて、最後にもう一度ギューっと抱きしめたら、未練が残らないように振り返らずに和奏の家を後にした。