第10章 君との向き合い方
何度も肌を重ね合った関係だ。
胸への刺激だけで、和奏をイカせる事など容易い。
重点的に舌で強い刺激を与えてやれば、それだけ和奏から甘い声が漏れる。
何度も肌を重ね合った関係だ…。
でも…こんなに酔いしれるような興奮は今までなかった。
気持ちがあるだけで、こんなに違うのか…。
「ふぅ…えっ…。」
甘い声に混ざって、和奏から涙声が漏れた。
自分の快楽だけを優先していたら、聞き逃してしまう程度の。
「和奏?」
胸への刺激を中断して顔を覗き込むと、大きな瞳いっぱいに涙を浮かべている。
「黒尾先輩…もっと…。」
自分が泣いている事に気付いてないのだろうか。
俺に…何を隠しているんだ?
途端に冷静になる。
好きだから、抱きたい。
けど、好きだからこそ、このまま抱いちゃいけねぇ気がする。
「和奏、もう俺の事、騙さないでくれ。俺が知りたいのは本当のお前だよ。」
和奏の耳元に直接語りかける。
和奏は悲しげな目でこちらを見上げると、今度は隠すつもりなどないのだろう。
両手の甲で目元を覆って泣き出した。
「黒尾先輩なんて…嫌いです。私のことなんて、何とも思ってないなら…泣いてる事なんて気付かずに最後まで抱いて下さいよ。」
話が全く見えないが、そんな事はどうでもよくて、和奏を抱き起こしてギュと抱きしめた。
俺の性欲もこの際、どうでもいい。
たとえ、和奏に嫌われても…それさえ別にいいと思える。
ただ、目の前の和奏に泣き止んで欲しい。