第10章 君との向き合い方
研磨に教えられた住所を頼りに和奏の家を探す。
俺の家には何度も呼び出していたけど、今更ながら、迎えや送りを一度もした事がない自分に気付かされる。
本当に…最低な男だな。
他人事のように考えてみたけど、虚しくなるだけだ。
本当に体調が悪いのかもしれないと、途中で差し入れにゼリーなんかを購入する。
こんな事している所をバレー部の連中に見つかったら、指差して笑われるのは確実だ。
でも…もしこれで和奏が笑ってくれるなら…そう思うと、他の連中にどう思われるかなんて、さほど気にならない。
恋する乙女か!
自分にツッコミを入れる。
でも、的を得たツッコミだろう。
和奏に嫌われるのが一番怖いなんて…乙女そのものだ。
住宅街の中に皐月と表札の掲げられた家を発見する。
インターホンを押そうかと思ったけど、家族の誰かが出たら…と思い直して、携帯に発信する。
和奏はもう俺の番号なんて消してるかもしれない。
俺だって普段だったら、切った女の番号なんてすぐに消す。
でも、和奏のだけは消せなかった。
「もしもし…黒尾先輩?」
数コールで耳元に和奏の声が聞こえる。