第9章 恋心の育て方
大丈夫。大丈夫。
そう唱えながら、ゆっくりと先程の画像を添付して送る。
[これ…何ですか?]
既読マークが付いた瞬間に、再び携帯が着信を知らせて震え出す。
迷いはあったけど、自分から聞いといて答えを聞かない訳にもいかない。
少し震える手で通話ボタンを押した。
「もしもし」
「和奏ちゃん?とにかく、会って話したいんだ。今から和奏ちゃんの家に行くから。」
心底慌てた様子が、電話越しにも伝わって来る。
それが話し合うまでもなく、事実を全て肯定している。
こういう時、正直な人って損だな。
冷静にそんな事を考えている自分は、きっとまだ事実を受け入れられてないんだと思う。
「いえ…会いたくないです。」
「待って、和奏ちゃん!会ってくれなくても行くから。」
会って…また、私の事を騙すのだろうか?
真摯なフリで。
人懐っこい笑顔で。
慣れたテクニックで。
「弁解なら必要ありません。元々、私と木兎さんは付き合っていた訳でもないですし。でも…今後二度と会いたくありません。」
プッっと、終話ボタン一つで終わりを告げる。
数ヶ月かけてゆっくり築いてきたものが…。
呆気なさ過ぎて、力が抜けた。
ブーッブーッ
何度も何度も着信を知らせる携帯が煩わしくて、主電源ごとオフにする。
真っ黒になった画面を見ていると、何だか涙が溢れ出して止まらなくなる。
何に泣いているのかも、わからないまま。