第9章 恋心の育て方
「えっと…ご丁寧に忠告いただき、ありがとうございます。でも、私は自分の目で見た物しか信用しませんので。」
何がおかしいのか、ニヤニヤ笑う先輩達に、何だか話を聞くのさえ嫌な気分になってくる。
「じゃあ、自分の目で確認したら?」
笑いながら携帯を操作する1人の先輩。
ブッと私のポケットで携帯が震えた。
何かを受信したようだけど…それより、何でこの先輩は私の連絡先を知っているんだろう。
そっちの方が怖い。
番号変えないと…。
そんな事を考えながら、先輩達の視線に促されて携帯を開く。
届いているのはメールで、添付ファイルが1つ付いている。
何だと言うのだ…。
何を見ても怯まない自信があったのに、そのファイルを開いて画像が目に飛び込んで来た時は、何も言えなかった。
「あは。驚いてる!それね、昨日の夜なんだけど、梟谷の友達が久しぶりに木兎君と寝たって言うから、証拠写真送って貰ったの。」
画像には上半身裸でベッドに眠る木兎さんと、毛布で胸元まで隠している女の人。
木兎さんの下半身は布団に隠れているが…きっと服は着ていないだろう。
「ウケる。驚き過ぎて何も喋らなくなってんじゃん。ちなみにその子、ちゃんと日時も確認出来るように携帯の画面も一緒に写してるでしょ?」
言われた通り、女性の手元を確認すると木兎さんの物と思われる携帯が握られており、待ち受け画面が点灯している。
日付と時間は…確かに昨晩だ。
私と…別れた後だ。
何で…。
昨日、何も変わった様子は無かった。
それより、キスを交わして…手を繋いで…、お互いの気持ちを認識したはずだ。
じゃあ何で…?
「わかったでしょ?木兎君があんた1人の物になるはずないんだから。」
何も言わなくなった私を笑いながら、捨て台詞のようにそれだけ残して先輩達は去って行った。
「木兎さんって言ったらクロより女遊び激しいでしょ。皐月が遊ばれてるんじゃないかって心配だっただけ。」
「俺と木兎比べたら、100人居たら100人が木兎の方が信用出来ないって言うだろ。」
孤爪君と黒尾先輩の言葉が蘇る。
「何でですか…?木兎さん。」
呟いてみたけど、返事が返ってくるはずもない。