第9章 恋心の育て方
「別にここで話してもいいけど…。」
ニヤニヤともったいぶる先輩達に、いい話でない事だけは確信が持てる。
「私も別にここでも構いませんよ。」
「皐月さん、クロの次は、梟谷の木兎君にちょっかい出していい気になってるみたいだけど…。」
あっ、木兎さんとの事か。
意地の悪そうな顔で話し始めた先輩に、色々ツッコミたい箇所はあるけど、それでは話が前に進まないので、言わせておく事にした。
内心、黒尾先輩とのキスがバレた訳ではなく、ホッとする。
「木兎君があんたなんか相手にすると思わないでよね!」
もう1人の先輩達が言葉を繋いだ。
黒尾先輩の親衛隊かと思ってたけど…木兎さんの事も好きだったのか。
「えっと…お話はそれだけですか?」
いつも言われている陰口を、面と向かって言われただけなので、あまりインパクトもない。
それだけであれば、適当に謝って、なだめて、お帰りいただきたい。
と言うか、私が帰りたい。
「今日は調子に乗ってるあんたに、木兎君に遊ばれてるだけだって証拠を持ってきたのよ。」
何だか…まだまだ続きそうな話にげんなりする。
木兎さんが1人の女に本気になるはずない。
絶対にからかってるだけだ。
そのうち、遊んで捨てる気でしょ?
そんな話は耳にタコが出来るほど聞いている。
それでも、私は木兎さんの真摯な態度を信頼する事にしたんだ。
今更、何を言われても揺らぐハズがない。