第9章 恋心の育て方
え?
ドアが開いたことより、ドアを開けて入ってきた人物を見て、もっと驚いた。
「あれ?黒尾先輩…図書委員じゃないですよね?」
黒尾先輩が目の前に立っていた。
「おう。ツレに押し付けられたんだよ。前に練習試合の時に俺の委員会の仕事代わって貰ったから。」
久しぶりに話すのに、そんな違和感や気まずさを全く感じさせない黒尾先輩。
私など眼中にないのだから、当たり前だ。
「サボりそうなのに…意外です。」
意外なのは自分自身だ。
木兎さんと付き合うと決めて、キスまでしたのに…目の前に黒尾先輩が居るだけで、こんなに心乱れている自分が意外だ。
「僕は真面目なのでサボったりしませーん。それより、仕事教えろよ。」
ふざけている時の黒尾先輩の口調…。
既に懐かしく感じる。
そうだ!仕事…。
黒尾先輩は私に会いに来たわけじゃないんだ。
図書委員の仕事を押し付けられて来たら、たまたま私が居ただけ。
「真面目って…。こっちの本を分類分けして、あっちの棚に仕舞って下さい。真面目な黒尾先輩。」
なんだか、勝手に黒尾先輩が自分に会いに来たんじゃ…なんて自意識過剰な考えをしてしまった自分に思わず笑いが漏れた。
「ところで、木兎と付き合ってんの?」
ほら。
黒尾先輩は私の事なんて、これっぽっちも意識してない。