第9章 恋心の育て方
とにかく腹ごしらえだと言って、2人でレストランで食事をして、ボーリングやゲームセンターで遊んでいたら、あっという間に夜になった。
帰りはいつも黒尾先輩にフラれた日に、木兎さんが来てくれた公園まで送ってくれるのが定番だ。
温かい缶コーヒーを片手に、くだらない話をしていると、急に木兎さんが真面目なテンションで言った。
「和奏ちゃん、今から言う事…嫌だったら本気で嫌だって言って欲しい。ってか、言ってくれないと俺、暴走するかも。」
「木兎さんはいつも暴走気味ですけどね。この前遊んだ時、赤葦君も凄く困ってたじゃないですか。」
何だか聞いてしまうと引き返せない気がして、冗談で返すと、木兎さんの真剣な瞳と視線がぶつかった。
あっ、冗談で返しちゃいけないやつだった。
そう思った時には、両肩に木兎さんの手が乗っていて、ぐっと引かれた勢いで、木兎さんと向かい合うような体勢になっていた。
「和奏ちゃん…キスしていい?」
木兎さんの雰囲気で何となく察してはいたけど…面と向かって言われると恥ずかしくて思わず俯く。
きっと近いうちにちゃんと付き合うんだろう。
木兎さんがあまりにも自然に私の側に居てくれたので、
私がそう思うようになるのも自然な事だった。
「嫌ならハッキリ言って…。じゃないと、本当に暴走しそう。」
嫌じゃ…ない。
ここ数ヶ月、頻繁に会っては居たけど、キスやハグはもちろん、手を繋がれた事だってなかった。
だから…勝手に想像してた。
木兎さんに抱きしめられたら…。
木兎さんにキスされたら…。
木兎さんとセックスしたら…。
自分の淫らな妄想に赤くなって、それから気付いた。
私の中で木兎さんの存在がそれくらい大きくなっている事に。
「嫌じゃ…ないです。」