第9章 恋心の育て方
side 皐月 和奏
黒尾先輩に失恋してから数ヶ月。
失恋の傷は時間とともに乾いてくるもので、黒尾先輩を見かけただけで疼いていた胸の痛みも、意識しなくてはわからない程度になっていた。
木兎さんとはあれから、週に1度くらいのペースで会っている。
部活が忙しい様子で会える時間はそう多くないけど、少ない時間の為にわざわざ会いに来てくれる事で、逆に好感度が増してたりする。
図書室の窓から外の景色を眺める。
運動場が部活で賑やかに盛り上がっているのに、図書室は私しかおらず静まりかえっている。
別に図書室に頻繁に来ているわけではなく、今日は委員会の仕事で来ているだけだけど、この空気は嫌いじゃない。
分類しないといけない本の山を見るが、正直手をつける気分にならないのは、昨日の出来事で頭が一杯だからだ。
昨日は部活がオフだと言う木兎さんが、いつも通り校門まで迎えに来てくれた。
木兎さんは女遊びの影響か、バレーボールの賜物か結構有名らしく、校門で落ち合うと、ヒソヒソと陰口を言っている女子生徒も居たけど、黒尾先輩と遊んで居た頃からそんなの慣れっこなので気にもしなかった。