第8章 君への気持ちを自覚する方法
「んで、クロはどうするつもりなの?」
「は!?」
俺の思考なんて、全てお見通しのくせに、わざわざそれを俺に言われせるか…。
研磨は相変わらず…いい性格してるな…。
「は?じゃないでしょ。どうやって木兎さんから皐月を取り戻すつもりなのかって聞いてるの。」
そんなつもりは微塵もない事…知ってるくせに。
「取り戻すも何も…俺のもんじゃねぇし。」
それについさっき、取り返しのつかないほど嫌われた所だ。
「可能性があるのに諦めるとか…許さないよ。」
俺の気持ちなんて無視で、黒いオーラを背負いながらこちらを見てくる研磨。
諦めるとか許さないって…。
「お前だって和奏の事…。」
好きなくせに…何言ってんだよ。
「オレはいいの。元からクロと皐月が上手くいくなら見守るつもりだったし。」
研磨の突然の告白に返す言葉が見つからない。
「だって、オレが皐月を見た第一印象が、この子きっとクロのタイプだろうなぁ。だよ?オレは最初から2人にくっついて欲しいと思ってたんだよ。」
「でも…好きなんだろ?」
俺の好きになる奴を第一印象で見極めるとか…やっぱり幼馴染ってレベルは軽く超えて、研磨には超能力が備わってるに違いないと確信する。
「クロの為に見かけ変えたり、自分のキャラクター偽ってでも近付いてさ。んで、クロが他の女の子と遊んでても文句ひとつ言わずに、私ももっと努力しなきゃ…とか言ってるの見てたらさ…最初はヤキモチ妬いたり、嫌でしょうがなかったのに、いつからか2人が上手くいけばいいって本気で思うようになったよ。皐月のクロに対して一途で…いじらしいところを見て応援したくなったんだと思う。まぁ、その相手が最初から諦めてるような腰抜けじゃ、応援のしがいもないけどね。」
今日は研磨にしては本当によく喋る。
俺だって、長年研磨の幼馴染をやってるんだから、その様子から研磨が本当に和奏が好きなのだとわかる。
俺の知らない…知る必要ないと切り捨ててきた和奏の事を、きっと研磨はたくさん見てきたんだろう。
自分を偽って無理したり…それを一般的には、研磨が言うように一途とか、いじらしいって表現するのか俺にはわかんねぇ。
けど…とてつもなく愛おしいと思った。