第8章 君への気持ちを自覚する方法
俺も…何でこんな思い通りにならない女が好きなんだ。
数ヶ月前のニコニコなんでも同意してくれた和奏の方が100倍可愛げがある。
でも…俺が欲しいのは、目の前にいるどうにも思い通りにならない和奏だ。
「何…イライラしてんのか知らないけどさ…。あっ、欲求不満でイライラしてんじゃねぇの?木兎じゃ満足出来ないの?俺が気持ちよくしてやろうか?」
イライラしてるのは和奏じゃない。
俺の方だ。
じゃなきゃ、こんな誰が聞いても間違った口説き方…俺がするはずねぇんだよ。
ただ、少しでも木兎より俺の方を見て欲しいかった。
数ヶ月前まで当たり前の様に肌を重ねて居たのが、嘘じゃないと思い出させたかった。
「黒尾先輩…最低です。…木兎さんの方が100倍マシ。」
間違ってもそんな言葉を聞き出す為に言ったんじゃない。
木兎に負けてるって、わざわざ和奏の口から聞きたかった訳じゃない。
何を考えてるのか自分でもわからないけど…
気付いた時には和奏を本棚に押さえつけて、キスで唇を塞いでいた。
とにかく黙って欲しいような、
俺を好きって言った気持ちを思い出して欲しいような、
最悪だと思われてるなら、一層徹底的に嫌われたいような、
何とも言えない気持ちだった。
「ん…ん…」
両手で俺を押し返してくるので、邪魔できないように掴んで、和奏の頭上にまとめ上げる。
しばらく濃厚なキスを交わす。
和奏の気持ちいい所は知ってる。
キスだけでも反応して、欲しくなっちゃうって事はわかってる。
「…どう?続きしたくなったか?」
和奏が完璧に感じてしまっているタイミングで唇を解放する。
今までみたいに和奏から俺を求めて欲しい。
和奏は俺の希望に反して、全身で俺を強く押し返すとそのまま右手を勢いよく振り上げた。
あっ、叩かれる…。
そう思い条件反射で身構えるが、振り上げた右手が下りてくる気配はない。
和奏の方を見ると、至近距離で視線がぶつかった。
「黒尾先輩なんて…大嫌いです。」
和奏の瞳から涙が流れた。
それも俺の聞きたかった言葉じゃねぇよ…。