第8章 君への気持ちを自覚する方法
「…まだ付き合ってません。」
研磨に聞いた通りの情報に少しホッとする。
「まぁ、木兎は適当な奴だからな。オススメはしねぇよ。俺が言うなって感じかもだけどな。」
何を期待してこんな事を言ったのだろう。
例えば、和奏が一緒になって木兎の事が信頼出来ないのだと愚痴ってくれれば、やっぱり俺にしとかないか?って冗談っぽく逃げ道残して言うつもりだったのだろうか。
そんな俺の期待を真っ向から否定する様なキツい表情で和奏がこちらを見た。
「本当に…どんな立場でそれ言ってるんですか?木兎さんは黒尾先輩より何倍も真面目な人です!」
本当にヤバい時ってのは、ヤバいと気付いた時には既に手遅れになっている時だ。
「俺と木兎比べたら、100人居たら100人が木兎の方が信用出来ないって言うだろ。」
俺の知ってる和奏は、俺の言ったことには何でも笑って同意してくれる。
あの和奏は全部偽物だったって言うのかよ。
正直、面白くない。
「他の人の評価なんて知りません。私が木兎さんを信頼してるので、それで十分です。今はまだ付き合ってませんが…近いうちに付き合うと思います。」
キッとこちらを睨みながら言う…こんな和奏、俺は知らない。
クソ…。
こいつにこんな風に言われる木兎が心底羨ましい。