第8章 君への気持ちを自覚する方法
side 黒尾 鉄朗
和奏は元々不意打ちの多い女だった。
突然俺の前に現れて、
突然本当の俺を引っ張り出したと思ったら、
突然俺の前から居なくなった。
最後まで笑顔で。
だから、突然あいつに心奪われたとしたって、今更驚いちゃダメだと自分に言い聞かせる。
和奏は不意打ちの多い女なのだから。
「あれ?黒尾先輩…図書委員じゃないですよね?」
そして、突然目の前に現れたとしても驚いちゃいけない。
例え、友人に押し付けられた図書委員の仕事をしに行って和奏と出くわしたとしたって。
「おう。ツレに押し付けられたんだよ。前に練習試合の時に俺の委員会の仕事代わって貰ったから。」
和奏と2人きりとか…こんな予定では無かった。
図書委員の仕事とか面倒だとは思ったけど、2年からも1人来るから、そいつと協力して本の整理をして30分ほどで終わる仕事だと聞いて引き受けた。
「サボりそうなのに…意外です。」
サボれば良かったと、心底後悔している。
和奏と話すのは、あの日、和奏が俺の家に来て以来だ。
あれから数ヶ月。
学校ですれ違う事はあったけど、まともに会話などしていない。