第7章 失恋の乗り越え方
それから数日、私は髪の毛を黒く染め直した。
制服のスカート丈も戻して、化粧もやめた。
そっちの方がいいよって、珍しく褒め言葉をくれた孤爪君を相手に、黒尾先輩は私のこの姿をどう思うだろうとか考えて、また胸がズキリと音を立てる。
最近はそんな感じの繰り返し。
黒尾先輩を意識しないように気を付けて過ごしているのに、ふと耳にする噂話に…。
グラウンドで体育の授業を受ける姿を教室の窓越しに見つけてしまった時に…。
他人行儀な会釈だけですれ違う廊下で…。
黒尾先輩の微かな気配に、まだ胸はズキズキと痛んでいた。
ケータイがメールを受信するたびに、無駄な期待に胸が膨らんで、やっぱり違ったとしぼんでいく。
先輩は私の事なんて、何とも思っていないんだろう。
きっと今まで遊んで来た多くの女の子達の中の1人。
興味無さそうな顔して、横をすれ違っていく黒尾先輩を見るたびに思い知らされる。
[ブッ]と教室の机の上で短く震えた携帯に、パッと顔をあげてる。
本当に懲りてないなぁと、自分で苦笑いしてしまう。
[木兎 光太郎]
ほら。黒尾先輩から連絡が来るはずがない。
最近急によく携帯に表示されるようになった見慣れた名前を確認して、短く息を吐き、携帯に手を伸ばす。
「ちょっと…木兎って…梟谷の木兎さん?なんで皐月が連絡取ってるの?」