第7章 失恋の乗り越え方
「私…木兎さんみたいになりたいです。」
木兎さんみたいに、自分に素直な強さが欲しい。
「え!?俺、和奏ちゃんがこんなにゴツくなったら嫌だ…。そのままで居て。」
身長185cmの和奏ちゃん…と想像するだけで気持ち悪い事を呟く木兎さんに再び笑いが溢れる。
「そういう意味じゃありませんよ。もっと自分らしく居たいって意味で…。」
「あっ、それならいいじゃん。その化粧も服装も…なんか無理してるなぁって初めて見た時から思ってた。本当の和奏ちゃん、見せてよ。」
本当の…って言われるほど変わらないんですけど…。
そんな事を言って話の腰を折る必要もない。
「そうですね。」
「なにその笑顔!めっちゃ可愛いんだけど。」
「…木兎さんが言うと全部チャラく聞こえますね。」
「あっ、それが和奏ちゃんの本心か。実は結構毒舌だよね。いいじゃん。やっぱり俺、そっちの方が好きだ。」
チャラいと伝えた直後に返ってくる言葉とは思えない。
そんな木兎さんに半分呆れながら、軽い会話が続いていく。
話しても、話さなくても、何も変わらないような…
そんな不必要で快適な会話。
「んでさ、和奏ちゃんの好みのタイプってどんな奴?あっ、黒尾君以外で答えてよ!」
「好みのタイプ…特に無いですけど…。強いて言うなら、背が高くて、男らしくて、優しい人ですかね?」
「それ、俺じゃん!ドンピシャじゃん!」
もういちいちツッコミを入れるのも諦めた頃に、木兎さんがそんな事を言っていた。
それでも…やっぱり黒尾先輩が理想の人だな。
そんな事をふと考えると、快適で緩い温度に癒されていた傷口がズキリと痛んだ気がした。